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 VOL25:蘇鉄(ソテツ)を食する島 (H21.12.1) 
南九州から奄美、沖縄にかけて、どこでも見かける蘇鉄の木

南国情緒溢れる蘇鉄(ソテツ)


 九州以南から奄美、沖縄にかけてよく公園や学校、官公庁などのほか、道路の脇などにも植えられているのが「蘇鉄(ソテツ)」という植物です。蘇鉄の名前の由来は読んで字のごとく「鉄」で「蘇る」植物と昔から言われており、元気を与えるため茎の部分にクギを打つ場合があるようです。大きくなると8mくらいに達し、椰子の木と同様、その南国ムード漂う容姿から人々に観賞用として愛されている植物ですが、デンプンを多く含むため、奄美では昔から非常用の食材として用いられていました。もちろん蘇鉄で造られた酒も存在していました。米で焼酎を造るよりも大量に造れたそうです。


デンプン豊富でも危険な食材

 薩摩藩が奄美を支配していた頃から戦後にかけて奄美は食料が乏しく、度々飢饉などの食料難に見舞われる事がありました。そんな時の島民の貴重な食料となったのが蘇鉄です。しかし豊富なデンプン質を有するものの、サイカシンなど有毒な成分を含むため、じっくりと時間をかけて毒抜きの作業が行われない場合、命を落とす場合があったようです。食べずに餓死を選ぶか、食べて死を選ぶかの瀬戸際に立たされたため「ソテツ地獄」という言葉も生まれました。昔から奄美地方には○○地獄という言葉が用いられますが、ホントに過酷な歴史環境にあったのだなとつくづく思います。喜界島には「シマジュウリ」という島の料理を紹介した書籍がありますが、その中にも食べられる植物、食べられない植物の紹介がされており、限られた食材でいかに生き抜いていくかが重要だったのかわかります。薩摩藩がサトウキビ作りに専念させるため船を作って漁業を営む事さえ禁止されていたのですから無理もありません。主に食べられていたのが種の部分です。奄美の方言で「ナリ」と言います。これは保存がきくうえに虫がつきません。食べる時は種を二つに割って皮を取り、実を長時間水にさらし発酵させ、さらに乾燥させるなどの処理を行い毒抜きをします。または微生物による解毒作用を利用して無毒化する場合があるようです。現在、それをもとにナリ味噌などの食品も島内で作られており、様々な料理に利用され個性豊かな食材として珍重されています。どんなに辛い状況でも、何とかして生き抜いていこうとする奄美の人々のたくましさには感動します。
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